題 名
「小諸なる古城のほとり」
釈 文
小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ 緑なすはこべは萠えず 若草も藉くによしなし しろがねの衾の岡邊 日に溶けて淡雪流る。
あたたかき光はあれど 野に満つる香も知らず 浅くのみ春は霞みて 麦の色わづかに青し 旅人の群はいくつか 畠中の道を急ぎぬ 。
暮れ行けば浅間も見えず 歌哀し佐久の草笛 千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む。
  1983(S.58)書芸院展